先端設備等導入計画で固定資産税はいくら減る?3,000万円の機械で5年間を試算

先端設備等導入計画とは、中小企業が市区町村の認定を受けて生産性向上設備を導入する計画です。一定の賃上げ方針や投資要件を満たす場合、対象設備の固定資産税の課税標準が3年間2分の1、または5年間4分の1に軽減されます。

取得価額3,000万円・耐用年数10年の機械装置では、課税開始から5年間の固定資産税額は約125万円となる試算です。設備を取得する前に先端設備等導入計画の認定を受け、3.0%以上の賃上げ方針などの要件を満たして5年間4分の1の特例を適用すると、約31万円となり、差は約94万円です。

この記事では、その94万円がどのように計算されるのか、また、賃上げ方針を1.5%にするか3.0%にするかを税額だけで決めてはいけない理由を解説します。

設備投資で使える3つの税制を一覧で比較したい方は、まとめ記事「設備投資で損しないために。買う前に確認したい3つの税制優遇」をご覧ください。本記事では、そのうち先端設備等導入計画について、固定資産税が実際に何円変わるかを掘り下げます。

いくら変わるのか

先に金額から示します。取得価額3,000万円・耐用年数10年の機械装置を想定し、固定資産税の標準税率1.4%で計算しました。

課税年度評価額(本則の課税標準)本則の税額4分の1特例の税額
課税1年目2,691.0万円37.7万円9.4万円
課税2年目2,136.7万円29.9万円7.5万円
課税3年目1,696.5万円23.8万円5.9万円
課税4年目1,347.0万円18.9万円4.7万円
課税5年目1,069.5万円15.0万円3.7万円
5年合計約125万円約31万円

軽減額は約94万円です。

償却資産の評価額は毎年下がります。前年中に取得した資産については取得価額に減価残存率を掛け、翌年以降は前年度の評価額に減価残存率を掛けていきます。耐用年数10年の場合、減価残存率は、前年中に取得した資産が0.897、前年前に取得した資産が0.794です(出典:総務省「減価残存率表」総務省「固定資産税の概要」)。上の表はこの計算に沿ったものです。

実際の税額は、設備の耐用年数、適用税率、他の償却資産との合算、市区町村の条例や端数処理などによって変わります。なお、前年中に取得した資産は、取得月にかかわらず半年分の減価残存率を用いるのが原則です。

軽減の内容は2段階です

正式には、中小企業等経営強化法に基づく「先端設備等導入計画」といいます。市区町村の認定を受けた計画に沿って設備を取得すると、固定資産税の課税標準が軽減されます。

設備と投資計画が対象要件を満たしたうえで、軽減率と適用期間を分けるのは、計画に位置づける賃上げ方針の水準です。

計画に位置づける賃上げ方針軽減内容
1.5%以上課税標準を3年間、2分の1に
3.0%以上課税標準を5年間、4分の1に

対象は、2025年4月1日から2027年3月31日までに取得した設備です(出典:中小企業庁「固定資産税の特例」中小企業庁「先端設備等導入計画 策定の手引き(令和7年度税制改正後・令和7年4月版)」)。

この点は、旧制度から変更されています。2025年3月末までの旧制度では、賃上げ方針の表明がなくても3年間2分の1の軽減が受けられました。現在は、賃上げ方針の表明が特例適用の必須条件になっています(出典:同手引き)。

1.5%と3.0%の税負担の軽減額の差は約48万円——追加人件費と分けて比較する

同じ3,000万円の機械で、方針の水準による違いを並べます。

位置づける賃上げ方針適用5年間の軽減額
1.5%以上3年間、2分の1約46万円
3.0%以上5年間、4分の1約94万円

差は約48万円です。

この数字だけを見ると、3.0%を選んだほうが得に見えます。一方で、増加する人件費も併せて比較する必要があります。

制度が求めているのは、方針を「表明」することです

賃上げ方針とは、申請事業年度またはその翌事業年度の雇用者給与等支給額を、申請事業年度の直前年度と比較して1.5%以上または3.0%以上増やすという方針を、従業員に表明することです(出典:同手引き)。

ここは2つの意味で誤解されやすい箇所です。

  • 表明した内容に沿って賃上げを実施することが前提です。そのうえで公式のQ&Aでは、経済情勢等により結果として未達となった場合でも、そのことだけをもって税の追納等は行わないとされています。ただし、賃上げ方針を実際には表明していなかった場合、特例は適用できません。未達と未表明はまったく別の話です
  • 比較するのは1年分です。3.0%の増加を5年間続けることが税制上の要件になっているわけではありません

以下の人件費の比較は、表明した方針どおりに賃上げを実施する前提で計算しています。

何を分母にするか——「雇用者給与等支給額」は役員報酬を含みません

比較の前に、もう一点だけ。

判定の基礎となる雇用者給与等支給額には、役員、役員の特殊関係者(親族など)、および個人事業主の特殊関係者への給与は含まれません。具体的には、国内雇用者へ支払う給与等の総額です。

社長の役員報酬が大きい会社ほど、この金額は「会社が払っている人件費の総額」より小さくなります。以下の損益分岐点の試算では、すべてこの「役員・特殊関係者を除いた国内雇用者への給与等の総額」を分母にしています。自社の数字を当てはめるときは、ここを取り違えないでください。

1年分で比べると、多くの会社ではほぼ拮抗します

制度上の比較年度、つまり1年分だけで見ます。

1.5%から3.0%へ引き上げると、差の1.5ポイント分の人件費が増えます。これは雇用者給与等支給額の1.5%です。約48万円と釣り合うのは、雇用者給与等支給額がおよそ3,200万円のときです。

3,000万円の機械を導入する会社にとって、国内雇用者への給与等の総額3,200万円は珍しい水準ではありません。つまり制度が求める1年分で見るかぎり、多くの会社では、増える人件費と増える税の軽減がほぼ釣り合います。役員・特殊関係者を除いた結果、この金額が3,200万円を下回る会社では、3.0%を選ぶほうが有利になります。

ただし、賃金は下がりにくいものです

実務では、一度引き上げた賃金の水準は、翌年以降も残るのが普通です。差額がその後も続くと考えるなら、話は変わります。

差額が5年間維持されると仮定した場合、追加の人件費は雇用者給与等支給額のおよそ7.5%です。約48万円と釣り合うのは、雇用者給与等支給額がおよそ640万円のときです。この見方では、640万円を超える会社では、税の軽減だけを理由に3.0%を選ぶのは割に合いません。

繰り返しますが、これは制度の要件ではなく、経営上の仮定です。具体的には、①表明どおりに賃上げを実行すること、②差の1.5ポイントが実際に発生すること、③その差額が5年間変わらず維持されること、④人数・労働時間・賞与が変わらないこと、⑤法定福利費と割引現在価値を考慮しないこと、という5つを前提としています。

何年分の費用として見るかが、判断の分かれ目です

見方損益分岐となる雇用者給与等支給額意味
制度上の比較年度(1年分)で見る約3,200万円多くの会社でほぼ拮抗する
差額が5年間続くと仮定して見る約640万円ほとんどの会社で割に合わない

※いずれも役員、役員の特殊関係者、個人事業主の特殊関係者を除いた、国内雇用者への給与等の総額です。

答えが変わるのは、前提が変わるからです。決めるべきは「48万円を取りにいくかどうか」ではなく、この賃上げを何年分の費用として見るかです。自社の賃金政策がどちらに近いかで、選ぶ水準は変わります。

判断はこう分かれます

  • すでに3.0%以上の賃上げを計画している会社:3.0%以上の方針を計画に位置づけて表明すれば、人件費をさらに増やすことなく、軽減額が約46万円から約94万円になります。1.5%以上の方針として表明すると、この差額約48万円を取り逃がします。
  • 賃上げの計画が1.5%程度の会社:1年分で見ればほぼ拮抗し、その後も続くと見れば割に合いません。税額から賃上げ率を逆算しないでください。

賃上げの計画が先にあり、そこに制度を合わせる。順番はこれです。

なお、賃上げの水準は、時給や月給の引き上げ率ではなく、前述のとおり雇用者給与等支給額が何%増えるかで判定します(出典:同手引き)。2026年7月28日に中央最低賃金審議会が答申した2026年度の目安は、目安どおりに引き上げられた場合で全国加重平均1,176円、前年から55円・4.9%の引き上げです(出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」)。ただし、最低賃金は時間単価の話です。時給を上げても、従業員数や労働時間が減れば、雇用者給与等支給額が1.5%や3.0%増えるとは限りません。自社の数字で試算する必要があります。

賃上げは法人税の側でも優遇があります。控除しきれなかった分を5年間繰り越せる仕組みについては、賃上げ促進税制の記事にまとめています。

先に確認したい「効果が小さいケース」

正直に書いておきます。次の3つのケースでは、この制度を使う実益が小さくなります。

1つ目は、償却資産が少ない会社です。固定資産税(償却資産)には免税点があり、市区町村内の課税標準額の合計が150万円未満なら課税されません(出典:東京都主税局「固定資産税(償却資産)」)。機械装置の最低取得価額は160万円ですが、160万円の機械を前年中に取得した場合の初年度評価額は、160万円×0.897=143万5,200円です。他に償却資産がなければ免税点を下回り、そもそも課税されません。その場合、軽減する税金が存在しません。

2つ目は、中古設備を購入する場合です。中古設備は制度の対象外です。

3つ目は、設備の取得時期が認定より先になる可能性がある会社です。納品・検収などに基づく税務上の取得時期が認定より先になる場合、その設備は対象になりません。発注済みであっても直ちに対象外とは限りませんが、取得時期の判断が必要です。契約内容・納品日・検収日を整理し、市区町村や税理士に確認してください。

反対に、一定額以上の償却資産を保有し、新品設備を認定後に取得する会社では、検討する余地があります。対象になるか分からない段階でも、設備の種類・金額・設置場所・取得予定時期が分かれば、初期の確認はできます。

対象になる会社と設備

制度には、性格の違う2つの要件があります。混同しやすいので分けて書きます。

計画の認定を受けられるのは中小企業者です。計画の認定要件として、設備導入によって労働生産性が年平均3%以上向上する見込みが必要です。

固定資産税の特例を受けられるのは中小事業者等です。資本金1億円以下の法人、従業員1,000人以下の個人事業主などが対象で、大企業の子会社(いわゆる、みなし大企業)は対象外です(出典:中小企業庁「固定資産税の特例」)。特例の要件として、年平均の投資利益率が5%以上となる投資計画が求められ、これは認定経営革新等支援機関の事前確認を受けます。

つまり、計画の認定を受ければ必ず税の特例まで受けられる、というわけではありません。2つの要件をそれぞれ満たす必要があります。

対象設備には、種類ごとに最低取得価額が定められています。

設備の種類最低取得価額
機械及び装置160万円以上
測定工具及び検査工具30万円以上
器具及び備品30万円以上
建物附属設備60万円以上

(出典:中小企業庁「先端設備等導入制度による支援」

生産や販売など、事業の用に直接使う設備であることも求められます。

手続きの順番:認定が先、取得が後

  1. 導入したい設備と取得時期を整理する(取得期限は2027年3月31日)
  2. 設備が所在する市区町村が制度を受け付けているか確認する
  3. 賃上げの計画を決める(雇用者給与等支給額で何%増やすかを試算する)
  4. 認定経営革新等支援機関に投資計画の事前確認を依頼し、確認書の発行を受ける
  5. 従業員に賃上げ方針を表明し、表明を証する書面を用意する
  6. 市区町村に先端設備等導入計画の認定を申請する
  7. 認定を受けてから、設備を取得する
  8. 設備取得後、最初の償却資産申告で特例関係書類を提出する(申告期限は原則として1月31日)

認定前に取得した設備は対象になりません。今回の試算では、認定前の取得を避け、必要な要件と手続きを満たすかどうかによって、5年間の負担に約94万円の差が生じます。

見積もりを取り始めた段階で、この流れを工程表に組み込むのが現実的です。機械によっては発注から納品まで数カ月かかります。納品日から逆算すると、動き始める時期は思ったより早く来ます。設備投資の意思決定そのものを整理したい場合は、設備投資の前に明確にしておくべきこともあわせてご覧ください。

この制度は市区町村ごとに運用されています。受付の窓口、対象地域・業種の範囲は自治体によって異なります。設備を置く場所の市区町村のホームページを必ず確認してください。

なお、法人税側の優遇である中小企業経営強化税制は、これとは別の制度です。そちらは経営力向上計画の認定を前提に、即時償却などが受けられます。要件を満たせば、設備投資の場面で両方を検討する価値があります。法人税側の解説はこちらの記事にまとめています。

まとめ

設備投資の損得は、買うときの補助金だけでは決まりません。買った後に5年間かかり続ける固定資産税まで含めて、初めて全体が見えます。

3,000万円の機械なら、軽減額は約94万円。ただし、1.5%と3.0%の差である約48万円は、追加の人件費と並べてから判断してください。制度が求める1年分で見ればほぼ拮抗し、賃上げがその後も続くと見れば割に合わなくなります。すでに3.0%以上の賃上げを計画しているなら、その水準で表明しないと約48万円を取り逃がします。

そして、その差を取りにいけるかどうかは、設備を取得する前の段取りで決まります。2027年3月31日の取得期限から逆算すると、検討は早いほうが有利です。

よくある質問

先端設備等導入計画を使うと固定資産税はいくら減りますか?

設備の取得価額、耐用年数、税率などで異なります。本記事の前提では、取得価額3,000万円・耐用年数10年の機械装置で、5年間の本則税額約125万円に対し、5年間4分の1の特例適用後は約31万円、軽減額は約94万円です。

1.5%と3.0%の賃上げ方針では何が違いますか?

1.5%以上の場合は課税標準が3年間2分の1、3.0%以上の場合は5年間4分の1になります。本記事の試算では、両者の軽減額の差は約48万円です。ただし3.0%を選ぶかどうかは、追加で発生する人件費と並べて判断してください。制度が求める1年分の比較で見れば雇用者給与等支給額およそ3,200万円が分岐点となり、多くの会社ではほぼ拮抗します。

3.0%の賃上げは5年間続ける必要がありますか?

税制上の要件としては求められていません。賃上げ方針は、申請事業年度またはその翌事業年度の雇用者給与等支給額を、申請事業年度の直前年度と比較するものです。ただし実務では一度引き上げた賃金水準は残るのが通常であり、負担を何年分として見るかは経営判断になります。

表明した賃上げを達成できなかった場合はどうなりますか?

表明した内容に沿って賃上げを実施することが前提です。そのうえで公式のQ&Aでは、経済情勢等により結果として未達となった場合でも、そのことだけをもって税の追納等は行わないとされています。ただし、賃上げ方針を実際には表明していなかった場合、特例は適用できません。

「雇用者給与等支給額」には社長の役員報酬も入りますか?

入りません。役員、役員の特殊関係者(親族など)、個人事業主の特殊関係者への給与は除かれ、国内雇用者へ支払う給与等の総額が基礎になります。役員報酬の比重が大きい会社ほど、この金額は会社全体の人件費より小さくなります。

最低賃金を引き上げれば3.0%の要件を満たしますか?

必ずしも満たしません。最低賃金は時間単価ですが、制度上の賃上げ方針は雇用者給与等支給額を基準とします。従業員数や労働時間の変動も含めた確認が必要です。

認定前に設備を発注していても利用できますか?

判断の中心は設備の取得時期です。認定前に取得した設備は対象になりません。発注済みの場合は、納品日、検収日、契約条件などを整理し、市区町村や税理士に取得時期を確認してください。

2027年3月31日までに何を終える必要がありますか?

現行制度では、対象設備を2027年3月31日までに取得する必要があります。さらに、その設備を取得する前に、市区町村から先端設備等導入計画の認定を受けておく必要があります。

資料がなくても相談できますか?

はい。設備の種類、おおよその金額、設置する市区町村、取得予定時期が分かれば、制度を検討する余地があるかどうかを初期段階で整理できます。見積書や決算書は、その後必要に応じて確認します。


設備の見積段階で、使える制度と数字を整理できます

RMCビジネスラボは、認定経営革新等支援機関です。先端設備等導入計画について、対象要件の初期確認、投資利益率や労働生産性の整理、市区町村への申請準備を支援しています。内容を確認し、要件を満たす場合には、認定経営革新等支援機関として必要な確認書を発行します。

初回30分の無料相談では、資料が揃っていなくても問題ありません。次の4点を、分かる範囲でお聞かせください。

  • 導入したい設備の種類
  • おおよその金額
  • 設備を置く市区町村
  • 希望する納品・取得時期

見積書や決算書が手元になくても、制度を検討する余地があるかどうかや、次に何を確認すべきかを整理できます。

給与総額・資金繰り・設備投資後の返済まで数字で確認したい場合は「経営健康診断」、導入後も月次で利益・人件費・資金繰りを追いたい場合は「経営定期健診」で継続して支援します。

→ 初回30分の無料相談を申し込む(オンライン)

無理な営業は行いません。相談内容を確認したうえで、対応可能な範囲と、費用が発生する場合はその金額を事前にご説明します。


※本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務判断は税理士または所轄の市区町村にご確認ください。試算は単純化した目安であり、実際の税額は取得時期・耐用年数・市区町村の運用によって異なります。

著者:日置 尚義(ひおき なおよし)/中小企業診断士・認定経営革新等支援機関。RMCビジネスラボ代表。製造業・飲食業・小売業・BtoBサービス業の経営者向けに、決算書と月次の数字をもとにした経営整理(経営定期健診)を提供しています。