たとえば、営業利益がどちらも500万円の会社が2社あるとします。決算書をもう一段下まで読むと、経常利益は一方が450万円、もう一方は300万円。
本業で稼いだ利益は同じなのに、通常の事業活動全体で残る利益には150万円の差がつく。この差を生む代表的な要因の一つが、借入金の支払利息です。
営業利益は本業で稼いだ利益、経常利益は営業利益に営業外収益を加えて営業外費用を差し引いた利益であり、その差を生む代表的な要因の一つが借入金の支払利息です。
そして今、金利のある状況が戻ってきました。借入れのある会社では、「営業利益と経常利益の間」で利益が削られていないか、これまで以上に確認する必要があります。
この記事の要点
- 営業利益と経常利益の差は、営業外収益と営業外費用の合計で決まります。差のすべてが支払利息とは限りません
- 日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました。約31年ぶりの高い水準です
- 借入平均残高1億円で適用金利が0.5%上がると、支払利息は単純計算で年50万円増えます。営業利益率3%の会社が同じ採算性のまま取り戻すなら、売上約1,667万円増に相当します
- 決算書で見るのは2カ所——「営業利益と経常利益の差」と「支払利息(支払利息割引料)の行」です
- 支払利息の増加が見えたら、資金繰り表で向こう1年の元本返済と利息を試算します
営業利益と経常利益の違い
損益計算書は、会社の利益を段階に分けて示します。
売上高から売上原価を引いたものが「売上総利益(粗利)」。そこから人件費や家賃などの販売費及び一般管理費を引いたものが「営業利益」です。営業利益は、本業でどれだけ利益を生み出したかを示します。
経常利益とは、営業利益に受取利息などの営業外収益を加え、支払利息などの営業外費用を差し引いた、通常の事業活動全体の利益です。
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 営業外収益 | 受取利息、受取配当金、為替差益、雑収入など |
| 営業外費用 | 支払利息、為替差損、雑損失など |
計算の関係は、次のとおりです。
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
したがって、営業利益と経常利益の差がすべて支払利息というわけではありません。ただし、借入れの多い会社では、支払利息がこの差を生む大きな要因になっていることが少なくありません。
なぜ今、支払利息を見るのか
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました。約31年ぶりの高い水準です。
数年前のゼロ金利のころとは、局面が変わっています。
ただし、政策金利が上がったからといって、すべての会社の借入金利が同じ幅・同じ時期に上がるわけではありません。実際の影響は、固定金利か変動金利か、金利の見直し時期、借入期間、金融機関との契約内容などによって異なります。
それでも、借入れのある会社にとって、支払利息はもう「毎年ほぼ変わらない費用」とは限りません。政策金利のニュースを眺めるだけでなく、自社の借入金利と支払利息がどう動いているかを、自社の数字で確認する必要があります。
金利が0.5%上がると、利益への影響はいくらか
仕組みを、単純化した例で見てみます。
借入金の平均残高が1億円ある会社で、適用金利が0.5%上がったとします。残高が1年間変わらないと仮定すると、支払利息は単純計算で年間50万円増えます。
1億円 × 0.5% = 50万円
この50万円は営業外費用として、経常利益をそのまま押し下げます。
では、この50万円を本業で取り戻すには、どれだけの売上増が必要でしょうか。営業利益率が3%の会社が、同じ採算性のまま売上を増やせると仮定すると、必要な売上増は約1,667万円です。
50万円 ÷ 3% = 約1,667万円
利息の50万円増は、売上約1,667万円増と同じ重さを持つ。本業の頑張りとは別のところで、これだけの差が生まれます。
もちろん、実際に売上が増えたときの利益率は、商品構成や変動費、人員の増減で変わります。この計算は、金利上昇による負担の大きさをつかむための単純化した例です。
社長が決算書で確認する2カ所
難しい分析は要りません。手元の決算書や月次試算表で、2カ所だけ見てください。
ひとつ目は、営業利益と経常利益の金額の差です。 経常利益が営業利益より大きく下がっていれば、本業の外でお金が出ています。ただし、その差がすべて支払利息とは限りません。営業外収益・営業外費用の内訳まで開いて、何が差を作っているかを確かめます。前年や前月より差が広がっていたら、その原因を調べます。
ふたつ目は、損益計算書の「支払利息」(支払利息割引料)の行です。 見るのは今の金額だけではありません。前年より増えているか。月次で増加傾向にないか。そして、借入残高が減っているのに支払利息が増えていないか——もしそうなら、適用金利が上がっている可能性があります。
動きが見えたら、資金繰り表へ進む
支払利息の増加が確認できたら、次は資金繰り表で向こう1年の返済負担を見ます。
損益計算書に載るのは支払利息だけで、借入元本の返済は費用ではないため、損益計算書だけでは資金流出の全体像は分かりません。借入金の元本返済額・支払利息・借入残高・金利の見直し時期を月ごとに並べ、金利がさらに0.25%、0.5%上がった場合に支払利息と資金残高がどう変わるかを試算しておく。
確認したいのは「金利が上がるかどうか」の予想ではありません。上がった場合でも毎月の支払いを続けられるか、運転資金が不足しないか、投資や採用の予定に影響しないか。ここまで数字で押さえておくと、判断が早くなります。
よくある質問
Q. 営業利益と経常利益の違いは何ですか?
営業利益は本業で得た利益です。経常利益は、営業利益に受取利息などの営業外収益を加え、支払利息などの営業外費用を差し引いた利益で、通常の事業活動全体の収益力を示します。
Q. 営業利益が黒字でも、経常利益が赤字になることはありますか?
あります。支払利息や為替差損などの営業外費用が大きければ、営業利益が黒字でも経常利益は赤字になり得ます。営業外費用の内訳まで確認してください。
Q. 営業利益と経常利益の差は、すべて借入金の利息ですか?
いいえ。差には受取利息・受取配当金・為替差損益・雑収入なども含まれます。借入れの多い会社では支払利息が大きな要因になりがちですが、内訳の確認が必要です。
Q. 政策金利が上がると、自社の借入金利もすぐに上がりますか?
必ずしもすぐには上がりません。固定金利か変動金利か、金利の見直し時期、契約内容などで異なります。借入契約書や返済予定表で確認してください。
Q. 経常利益は、会社の手元に残る現金ですか?
いいえ。経常利益は会計上の利益で、手元の現金とは一致しません。この下には特別損益や法人税等があり、最終の利益は当期純利益です。借入元本の返済や売掛金の増減も、利益とは別の形で資金繰りに影響します。手元資金は資金繰り表で確認します。
まとめ
営業利益が黒字でも、それだけで安心するのは早いかもしれません。
営業利益は本業の収益力を示す大事な数字です。しかし支払利息などの営業外費用が増えれば、営業利益が同じでも経常利益は減っていきます。
まず見るのは2カ所——営業利益と経常利益の差、そして支払利息の行。支払利息が増えていたら、借入残高・適用金利・金利の見直し時期を確かめ、資金繰り表で向こう1年の元利金返済の負担を試算する。
決算は年に1回。ですが金利や借入条件は、その間にも動きます。月次試算表で営業利益・経常利益・支払利息の動きを追うことが、早めの経営判断につながります。
RMCビジネスラボでは、決算書の数字を「次にどう動くか」に翻訳する月1回の経営定期健診を提供しています。営業利益と経常利益の差、支払利息の動き、借入金の返済予定、そして向こう1年の資金繰りまで、社長と一緒に確認します。年1回の決算を待たず、会社の収益力と資金繰りの変化を月次でつかむための伴走です。
→ 営業利益・支払利息・資金繰りを毎月確認する「経営定期健診」の詳細はこちら
※本記事は、決算書の読み方に関する一般的な考え方を紹介するものです。記載の計算例は仕組みを説明するための単純化したモデルであり、個別の会社の税務処理、会計処理、融資判断を保証するものではありません。自社の借入条件や適用金利については借入契約書・返済予定表をご確認のうえ、具体的な処理や判断は顧問税理士、金融機関などにご相談ください。
出典・参考資料
- 日本銀行「金融政策決定会合 決定内容」(2026年6月15・16日会合) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/index.htm
- J-Net21(中小機構)「財務の基礎知識」 https://j-net21.smrj.go.jp/handbook/finance/treasury.html
この記事を書いた人
日置 尚義(ひおき なおよし)|中小企業診断士・認定経営革新等支援機関|RMCビジネスラボ代表。製造業・飲食業・小売業・BtoBサービス業の「売上はあるが手元に残らない」を月1回の経営定期健診で整理する。
