決算書を2期分並べたら、「順調」だと思っていた会社の課題が見えた

決算書は1期分を見るだけでは「写真」に過ぎず、2期分を並べて率(営業利益率・費目別比率)で比較することで、会社の変化の方向性が「動画」として見えてきます。外注費や人件費の増加が売上に連動しているか、比率で追うことが構造的な課題の早期発見につながります。

先日、ある企業の経営数字を整理する機会がありました。社長は「うちは順調だ」と言っていました。

決算書を1期分だけ見ると、たしかにそう見えます。自己資本比率は50%を超えていて、借入も少ない。「財務的には健全ですね」と言いたくなる数字です。

ところが、2期分を並べてみると、景色が変わりました。


売上は伸びている。でも利益率が下がっている

2期目の売上は1期目より伸びていました。社長が「順調」と感じていたのは、この売上の伸びを見てのことでしょう。

しかし、営業利益率を計算すると5%を切っていました。売上が増えたのに、手元に残るお金はほとんど増えていない。

原因を探ると、外注費でした。売上に対する外注費の比率が、約50%に達していたのです。

売上が伸びた分だけ外注に出している。つまり、「売上が伸びるほど外注費も膨らむ構造」になっていました。


「健全な会社」と「儲かる会社」は違う

BSだけを見ていると、この会社は健全に見えます。自己資本比率は高く、債務超過のリスクはありません。

しかし、PLの動きを追うと話が変わります。

売上は増えているのに営業利益率が低い。この外注比率のまま売上が横ばいになれば、利益はほとんど残りません。少しでも売上が下がれば、赤字に転落します。

「BSは安全だが、PLに構造的な課題がある」。これは決算書を1期分だけ見ていても気づけません。2期分を並べて、初めて見える問題です。


数字を「見る」と「並べる」は違う

決算書を見ること自体は、多くの社長がやっています。税理士から届いた書類に目を通す。売上と利益をざっと確認する。

ただ、2期分を並べている社長は少ない。

2期分を並べるだけで、こんなことが見えてきます。

  • 売上は伸びたが、利益率はどう動いたか
  • どの費目が増えているか。その増え方は売上に連動しているか
  • BSの安全性はPLの動きと整合しているか
  • 変化が見えたら、来期どこを調整すれば利益が残るかを考える出発点になる

1期分の数字は「写真」です。2期分の数字は「動画」です。経営の方向性は、動画にしないと見えません。


まとめ

今回の経験で改めて感じたことがあります。数字は、比べて初めて意味を持つ。

1期分の決算書を見て「うちは大丈夫」と思っている社長は少なくありません。しかし、2期分を並べると「大丈夫ではない予兆」が見えることがある。

特に外注費や人件費のように、売上に連動して膨らむ費目は要注意です。比率で追わないと、変化に気づけません。

経営の数字を定期的に整理する。前の期と比べる。変化の方向を確認する。この繰り返しが、「なんとなく順調」を「根拠のある判断」に変えます。半年に一度でもいい。まず手元の決算書を2期分、机に並べてみてください。


この記事で書いたように、決算書は2期分を並べると見えるものが変わります。ただ、忙しい中でそれを一人でやり続けるのは簡単ではありません。

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よくある質問

Q. 決算書を2期分並べるとき、具体的に何を比べればよいですか?

A. まず売上高と営業利益率を比べてください。次に、費目別の対売上比率(外注費率・人件費率・販管費率など)を確認します。金額が増えても売上に連動した増加であれば問題ありませんが、売上の伸び以上に費目が膨らんでいる場合は構造的な課題のサインです。

Q. BSが健全でもPLに問題があることはありますか?

A. はい、よくあるケースです。過去の蓄積で自己資本比率が高くても、足元の利益率が低ければ将来の体力は少しずつ削られます。特に「売上は伸びているのに利益率が下がり続けている」状態は、BSの数字だけでは気づきにくい構造的リスクです。

Q. 外注費率が高い会社は、どのような対策を取ればよいですか?

A. まず「その外注費は売上に連動しているか、それとも固定化しているか」を確認します。連動しているなら、受注単価の見直しや外注先の再交渉が有効です。固定化しているなら、内製化の検討や外注先の整理が選択肢になります。いずれも、自社の粗利率への影響を試算してから判断するのが基本です。