税理士から届く「試算表」、社長は3カ所だけ見ればいい

試算表(月次の損益計算書・貸借対照表)は毎月届くが、多くの経営者は「数字は見ているがどこを見ればよいかわからない」状態にあります。確認すべきは①売上総利益率(粗利率)②現預金残高の変化③借入金残高と返済余力の3点です。

毎月、税理士事務所から届く「試算表」を受け取っている。でも、正直どこを見ればいいのか分からない。「あとで見よう」と思ったまま、引き出しにしまっている——。そんな社長は、実は少なくありません。試算表は、よく「会社の通知表」と言われます。ただ、学校の通知表と違って、読み方をきちんと教わった経営者はほとんどいないのが実情です。だから、数字が苦手でも当然です。でも安心してください。試算表を隅から隅まで読む必要はありません。忙しい社長が毎月5分で自社の状態をつかむなら、見るべきはたった3つの項目で大丈夫です。

  • 粗利率
  • 現預金の増減
  • 粗利が固定費をどれだけカバーしているか

この3つだけでも、会社の「稼ぐ力」「今の体力」「安全余白」がかなり見えてきます。

まず大前提:「正確さ」より「毎月同じ基準で見られるか」

ひとつだけ、先に大事なことをお伝えします。試算表は、完璧に細かく正しいこと以上に、毎月同じ基準で比較できることが重要です。たとえば、

  • 在庫が毎月きちんと反映されているか
  • 減価償却費が月次で計上されているか
  • 売上や外注費の締めタイミングが毎月そろっているか

このあたりがバラバラだと、前月の比較がしづらくなります。もし不安なら、税理士の先生にこう聞いてみてください。

「この試算表、前月比較や前年同月比較に使える状態ですか?」

以下3点を重点的に確認することで、数字の見え方は大きく変わります。

① 粗利率 ——「稼ぐ力の質」を見る

損益計算書(PL)で、まず確認したいのは売上高そのものより粗利率です。

粗利率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

売上が伸びていても、粗利率が下がっているなら要注意です。値引きが増えているのかもしれない。仕入や外注費が上がっているのかもしれない。あるいは、売れている商品の構成が変わっているのかもしれません。逆に、売上が少し落ちていても、粗利率が維持・改善しているなら、会社の稼ぐ力の土台は崩れていない可能性があります。

ここで大事なのは、「今月は良いか悪いか」を単独で判断することではありません。見るべきは、

  • 先月より上がったか、下がったか
  • 前年同月と比べてどうか

という動きです。数字が動くとき、現場では必ず何かが起きています。値付け、仕入条件、外注比率、商品構成、案件ごとの採算。粗利率は、その変化を最初に教えてくれる数字です。

② 現預金の増減 ——「今の体力」を見る

次に見るのは、貸借対照表(BS)の現預金です。ここで見るべきは、残高の多い少ないだけではありません。先月末から増えたか、減ったかを見ます。

経営ではよく、利益は出ているのに、お金が残らないということが起きます。いわゆる「勘定合って銭足らず」です。だからこそ、現預金の増減は、社長が毎月必ず押さえておきたい数字です。もし現預金が減っているなら、原因は大きく3つに整理できます。

  • 本業でお金が寝ている
    例:売掛金の回収が遅れている、在庫が増えている
  • 支払いが先に出ている
    例:仕入、経費、税金、賞与などの支払い
  • 投資や返済に回っている
    例:設備投資、借入返済

ポイントは、社長自身が「今月、なぜお金が増えたのか・減ったのか」を一言で説明できるかです。説明できるなら、数字を経営に使えています。説明できないなら、それが今月の会議テーマです。

③ 粗利が固定費をどれだけカバーしているか ——「安全余白」を見る

3つ目は、今の粗利で固定費をどれだけ賄えているかです。固定費とは、たとえば次のようなものです。

  • 人件費
  • 家賃
  • リース料
  • 通信費
  • 保険料
  • 減価償却費

こうした費用は、売上が多少増減しても大きくは変わりません。だからこそ、固定費が重すぎると、会社はじわじわ苦しくなります。月次でざっくり見るなら、こんな考え方が分かりやすいです。

固定費カバー率 = 粗利益 ÷ 固定費

目安としては、

  • 1.2以上:比較的余裕がある
  • 1.0〜1.2:注意ライン
  • 1.0未満:今の粗利では固定費を賄い切れていない

※厳密な損益分岐点は「限界利益」で考えるのが基本ですが、まずは月次の実務として、粗利が固定費を上回っているかを見るだけでも十分役に立ちます。

社長の「毎月5分」は、この順番で十分です

試算表が届いたら、毎月この順番で見てみてください。

1分目

粗利率は、先月や前年同月と比べて上がったか、下がったか

2〜3分目

現預金は増えたか、減ったか。その理由を一言で言えるか

4〜5分目

粗利は固定費をどれだけカバーできているか

そして最後に、メモを1行だけ残します。

  • 今月の違和感は何か
  • 来月までに、どんな手を打つか

これだけで、試算表は「積まれる書類」から「意思決定の材料」に変わります。

試算表は「過去の記録」ではなく、「次の一手」のヒント

「数字は苦手だから、決算のときにまとめて聞けばいい」そう思う気持ちもよく分かります。でも、決算書は基本的に終わったことの報告書です。一方、月次の試算表は違います。それは、これからどんな手を打つべきかを考えるための資料です。

  • 値上げを検討すべきか
  • 外注や仕入の見直しが必要か
  • 採用や投資に踏み切れるか
  • 資金繰りに先手を打つべきか

その判断を、感覚ではなく数字で支えてくれるのが試算表です。全部を理解しなくていい。まずは3カ所だけ。毎月5分、それを続けるだけで、会社の見え方は変わります。

数字を見る時間を、後回しにしないために

とはいえ、社長が一人で数字を見続けるのは、意外と難しいものです。日々の業務に追われていると、分かっていても後回しになってしまいます。だからこそ、月に一度でも、試算表を見ながら課題を言葉にする時間を持つこと自体に意味があります。

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よくある質問

Q. 試算表と決算書は何が違うのですか?

A. 試算表は月次で作成される途中経過の数字です。決算書は年度末に確定した公式の財務諸表で、税務申告や融資審査に使われます。試算表は速報値として「今どうなっているか」を月次で把握するために使います。

Q. 税理士に試算表の説明を頼んでいいですか?

A. もちろんです。ただし、説明を聞くだけでなく「粗利率・現預金の増減・固定費カバー率」の3点について自分から聞く習慣をつけると、毎月の確認が格段に効率的になります。

Q. 粗利率の「良い水準」はいくつですか?

A. 業種によって大きく異なります。卸売業は10〜20%程度、サービス業は50〜70%程度が一般的です。重要なのは他社との比較よりも「自社の前月・前年同月との比較」です。急な変化があれば、その理由を確認してください。