2027年4月以降、紙の手形・小切手は電子交換所で取り扱われなくなります。また2026年1月施行の取適法(中小受託取引適正化法)では、対象取引での手形払いが禁止されます。手形を振り出す側・受け取る側ともに、資金繰りと支払条件の見直しが必要な時期です。
2026年度末が近づき、手形を取り巻く実務は大きく変わっています。
政府は2021年に、約束手形の利用廃止に向けた方針を示しました。銀行実務でも、紙の手形・小切手から電子化への移行が進んでいます。2027年4月以降を期日とする紙の手形・小切手は、電子交換所で取り扱われません。
「うちは手形を出していないから関係ない」——そう考えている会社も、安心はできません。影響を受けるのは、手形を振り出す側だけではないからです。受け取る側も、回収のタイミングや資金繰りの組み立て方を見直す必要が出てきます。
何が変わっているのか
まず押さえておきたいのは、制度と実務の両方が動いているという点です。
政府は2021年に、2026年までの約束手形の利用廃止と小切手の全面電子化を打ち出しました。これを受けて、銀行業界でも紙から電子への移行が進められています。
加えて、2026年1月には改正下請法が施行されました。略称は「中小受託取引適正化法」、通称は「取適法(とりてきほう)」です。対象となる取引では、支払期日は受領日から60日以内が原則で、手形による支払いは禁止されます。従来の長い支払サイトや手形払いは、見直しが必要です。支払遅延があれば、年14.6%の遅延利息が発生します。
要するに、これまでの商慣行のままでは通りにくくなってきた、ということです。
中小企業ほど影響を受けやすい理由
中小企業では、今も手形や長めの支払サイトが残っているケースがあります。特に建設業や製造業では、その傾向が比較的強く見られます。
紙の手形で代金を受け取る場合、満期まで現金化できません。必要があれば割引や借入でつなぐことになります。こうした資金繰りに慣れてきた会社ほど、手形の見直しは経営に直接響きます。
一方で、回収が早まる会社にとっては追い風です。入金時期が前倒しになれば、運転資金に余裕が生まれます。逆に、これまで手形で支払いを先送りしていた側は、現金の手当てを早めに考えなければなりません。
同じ制度変更でも、受け取る側なのか、支払う側なのかで意味合いは大きく変わります。
今のうちに確認しておきたいこと
1. 手形と支払サイトの棚卸しをする
最初にやるべきなのは現状把握です。受取手形がいくら残っているか。支払手形をどのくらい使っているか。あわせて、売掛金の回収サイトと買掛金の支払サイトも見ておきたいところです。
決算書に数字は出ていますが、勘定科目だけ眺めても影響はつかみにくいものです。月ごとの入出金に落としてみると、見え方が変わります。
2. 主要な取引先の方針を確認する
次に確認したいのが、取引先の支払い方法です。これまで手形で受け取っていた取引先があるなら、今後はどうするのかを早めに聞いておくべきです。振込に切り替わるのか、電子的な決済手段に移るのか、支払サイトはどう見直されるのか。ここが曖昧なままだと、資金計画が立てづらくなります。
特に大口先の条件変更は、影響が一気に出ます。後回しにせず、先方の方針を押さえておくことが大切です。
3. 資金繰り表を更新する
制度変更の影響は、感覚ではなく数字で見たほうが早いです。支払いが前倒しになったとき、月末資金はどこまで減るのか。逆に、回収が早まればどの程度改善するのか。こうした点は、資金繰り表を作り直すとかなりはっきりします。
「手形がなくなると大変そうだ」と漠然と考えるより、どの月にいくら不足するのかを見える形にしたほうが、打ち手も決めやすくなります。
4. 電子化への準備を進める
紙の手形に代わる手段として、でんさいなどの電子的な決済方法を検討する会社も増えています。導入する場合は、金融機関での手続きに加えて、社内の運用も整えておく必要があります。取引先との合意、経理処理の流れ、承認ルールまで含めて準備しておくと、切り替えがスムーズです。
なお、取引の内容によっては法令上の扱いも変わるため、対象取引にあたる場合は、取引先や金融機関とも確認しながら進めるのが無難です。
早く動いた会社から、対応に余裕が出る
今回の変化は、単に紙がなくなるという話ではありません。回収と支払いのタイミングが変わり、資金繰りの前提そのものが動きます。
だからこそ、今のうちに整理しておく意味があります。
まずは決算書を開いて、受取手形、支払手形、売掛金の回収条件、買掛金の支払条件を確認する。そこから資金繰り表に落とし込めば、自社にどんな影響が出るのかが見えてきます。
慌てて動くより、早めに全体像をつかむ。それが一番、現実的な備え方です。
手形の見直しや支払条件の変更が、自社の資金繰りにどう響くのか。決算書と資金繰り表を並べて整理すると、必要な対応が見えやすくなります。RMCビジネスラボでは、決算書をもとに回収・支払サイトの変化を確認し、資金繰り計画の見直しをお手伝いしています。
よくある質問
Q. 手形を出していない会社でも、今回の制度変更の影響を受けますか?
A. はい、受け取る側も影響を受けます。これまで手形で回収していた売掛金が振込に変わる場合、入金時期が変わり資金繰り計画の見直しが必要になります。また、取引先が手形払いをやめる場合に現金での支払いを求められれば、その取引先の資金繰りに影響が出て、連鎖的に自社の回収条件も変わることがあります。
Q. 取適法(中小受託取引適正化法)とは何ですか?自社は対象になりますか?
A. 2026年1月に施行された法律で、旧・下請法を改正したものです。製造委託・役務提供委託など一定の取引が対象で、支払期日は受領日から60日以内、手形払いは禁止となります。対象取引かどうかは取引の規模・内容によりますので、公正取引委員会・中小企業庁の案内を確認するか、専門家に相談することをおすすめします。
Q. でんさい(電子記録債権)への移行は、何から始めればよいですか?
A. まず取引のある金融機関に相談するのが最初の一歩です。でんさいの利用には金融機関での口座開設・手続きが必要です。また、取引先がでんさいを利用しているかどうかの確認も必要になります。自社の主要取引先の動向を把握した上で、移行スケジュールを検討するのが現実的です。
